2026年5月13日水曜日

「AIがコンサルを不要にする」は半分だけ正しい——本当に必要なのは"伴走者"だ

「AIがあればコンサルはいらない」——この言葉が、最近あちこちで聞こえるようになった。

マッキンゼーが数千人規模の人員削減を計画し、アクセンチュアもAIを使わない社員を昇進させないという方針を打ち出した。「コンサルの仕事の3割はAIで代替できる」という専門家の指摘もある。

セキュリティコンサルタントとして活動している僕自身、この流れを無視するわけにはいかない。でも現場で感じているのは、「AIがコンサルを不要にする」は半分だけ正しいということだ。残りの半分について、正直に書く。

ISO27001にコンサルは必要か——正直に言うと、大半の会社はいらない

1. 現実:AIは中堅コンサルタントのレベルに達した

まず事実を認めなければならない。AIは確実にコンサルタントの仕事を侵食している。

大手コンサルファームで実際にAIが行っているのは、論点整理・情報収集・切り口の導出・レポートのドラフト生成——これらはかつて中堅コンサルタントが担っていた業務そのものだ。

元BCGのコンサルタントが「5年後の話だと思っていたことが今年の話になった」と述懐しているが、この加速度は僕も体感している。1年前と今とでは、AIにできることの幅が全く違う。

2. AIが代替した部分:調査・整理・テンプレート

具体的にAIが代替した——あるいは代替しつつある——コンサル業務を整理する。

情報収集と調査:業界動向・競合分析・法規制の調査は、AIが圧倒的に速い。人間が数日かけていた調査が、数時間で終わる。

フレームワークの適用と整理:SWOT分析・PEST分析・リスクマトリクスの作成などは、AIの得意分野だ。構造化された分析結果を瞬時に出してくれる。

テンプレート的な文書作成:規程・手順書・報告書の叩き台を作る作業は、もはやAIで十分だ。僕自身、クライアント向けの文書ドラフトの多くをClaudeで作成している。

これらの業務を「コンサルの価値」として高額な費用を請求していたコンサルタントは、確実に淘汰される。ここは認めなければならない。

3. AIが代替できない部分:意思決定の伴走

では、AIが代替できない部分は何か。

「この会社の、この状況で、この判断は妥当か」を一緒に考えること——これはAIにはまだできない。

AIは汎用的に「こういう場合はこうすべきです」と回答する。でも現場では「社長がセキュリティに興味がない」「担当者が来月異動する」「予算が来期まで出ない」という個別の事情がある。この事情を踏まえた上で「今どう動くか」を一緒に考えるには、組織の文脈を理解している人間が必要だ。

さらに言えば、内部統制の観点から、判断の独立性を担保する外部の人間の存在は、AIでは代替できない。自分で調べて、自分で判断して、自分で実行する——この構造は内部統制として弱い。外部の人間がプロセスに関与することの価値は、AIの時代でも変わらない。

4. 「自分でやれる」が落とし穴になるケース

AIがあれば自分でできる——その判断自体は間違っていない。実際、多くの業務はAIの力を借りれば自力で進められるようになった。

問題は、「自分でやれる」と「正しくやれている」は別の話だということだ。

AIが出したリスクアセスメントの結果を「これで大丈夫だろう」と採用する。AIが書いたセキュリティ規程を「よくできているから」とそのまま使う。AIが提案した管理策を「AIが言うなら」と実装する——このプロセスに誰もチェックを入れていない状態は、実はかなり危険だ。

AIの出力を正しく評価し、自社の実態に合っているか判断できる「目利き」が横にいるかどうか——これが結果の品質を左右する。

5. 必要なのは「答えを出す人」ではなく「伴走者」だ

ここまで書いてきたことを整理すると、コンサルタントの役割は明確に変わった。

昔のコンサル:答えを持ってくる人
調査して、分析して、「こうすべきです」と提案する。この役割はAIが代替した。

これからのコンサル:プロセスに伴走する人
AIと一緒に進める担当者の横にいて、判断の妥当性を確認し、意思決定を支援し、プロセスの品質を担保する。

「伴走」という言葉が最近よく使われるが、これは単に「一緒にいる」という意味ではない。AIの出力を正しく評価し、組織の実態に合わせた判断ができ、内部統制上の独立性を持った外部の人間がプロセスに関与すること——これが伴走の本質だ。

6. フルコンサルから「スポット伴走」へ

伴走の形も変わってきている。フルタイムでプロジェクトに張り付くフルコンサルは、中小組織では費用対効果が合わない。

AIを活用することで、担当者が自力で進められる範囲が大幅に広がった。だからこそ、「詰まったときだけ相談できる」「判断に迷ったときだけ壁打ちできる」というスポット型の伴走が合理的な選択肢になっている。

適用範囲の設定で迷ったとき。リスクアセスメントの結果が妥当か不安なとき。内部監査の初回で進め方が分からないとき——こういう「ピンポイントの困りごと」に対応するスポット伴走は、AIの時代だからこそ価値が上がっていると感じている。

ISO27001 × ISO42001——2つの規格を統合管理する現実的なアプローチ

AIを使いこなせる人が横にいること——それが新しいコンサルの形だ

「AIがコンサルを不要にする」——これは半分正しい。調査・整理・テンプレートの仕事を高額で請求する旧来型のコンサルは、もう必要ない。

でも残りの半分、AIを正しく使いこなし、その出力を評価でき、組織の文脈に合わせた判断を支援できる人間の価値——これはむしろ上がっている。

AIがどれだけ賢くなっても、「この会社の、この担当者の、この状況で、今何をすべきか」を一緒に考えられる人間は必要だ。それがこれからのコンサルの形であり、僕自身が目指しているポジションでもある。

AIツールの「企業姿勢」で選ぶ時代——僕がClaudeを使い始めた話

関連記事

ISO27001にコンサルは必要か——正直に言うと、大半の会社はいらない
コンサルの必要性を3パターンに整理した記事。本記事の前提として読むと理解が深まる。

ISO27001 × ISO42001——2つの規格を統合管理する現実的なアプローチ
AIを業務に組み込む時代の新しい規格対応。スポット伴走が活きる場面の具体例。

AIツールの「企業姿勢」で選ぶ時代——僕がClaudeを使い始めた話
僕自身がAIをどう選び、どう使っているかの原点記事。

0 件のコメント:

Leica D-LUX 8 実機レビュー——「不便だ。でも、それがいい」と思える一台

「不便だ。でも、それがいい。」——D-LUX 8は、そういうカメラだ。 ライカのコンパクトカメラ、D-LUX 8を新品で手に入れた。約1ヶ月使ってみて、はっきり言えることがある。 このカメラ、スペックで語ると魅力が半分も伝わらない。 「ライカのスマホやiPhoneのア...