「コンサルなしでISO27001は取れますか?」——正直に答えると、大半の会社は取れる。
セキュリティコンサルタントとして活動しながら、こう言い切るのは自己否定に聞こえるかもしれない。でも、これが現場で見てきた現実だ。
コンサルが必要かどうかは「会社の状況次第」——それだけで終わる話じゃない。「どんな関わり方が本当に価値を生むか」を整理することの方が、ずっと大事だと思っている。今回はそれを正直に書く。
目次
1. 正直なところ:大半の会社はコンサル不要だ
まず前提として、ISO27001の要求事項自体はそこまで難解ではない。文書を読んで理解できる人がいて、週に数時間を確保できる担当者がいれば、コンサルなしで取得できる会社は多い。
現場でコンサルをしていて感じるのは、「コンサルがいなければ進まなかった」より「コンサルがいなくても進めたはずなのに使ってしまった」というケースの方が圧倒的に多いということだ。
費用の面でも、フルサポートのコンサルは決して安くない。その費用を人件費や設備投資に回した方が、組織のセキュリティ水準が上がるケースは少なくない。
→ ISO27001の取得費用はいくらかかるか——コンサル費・審査費・維持費の現実
2. それでも外部の人間が必要な理由
「コンサル不要」と言いながら、それでも外部の人間が関わる意味があると思っている場面がある。
それは「意思決定」と「決定のプロセスを記録・整える」場面だ。
社員が「このリスクは許容範囲だ」と判断するのと、外部の人間が「このリスクは業界標準で見て許容範囲です」と確認するのでは、判断の重みが違う。特にISMSのリスクアセスメントや適用範囲の設定は、「なぜその判断をしたか」の根拠が後から問われる場面だ。
外部の人間がいることで、「誰かに見られている」という緊張感が、プロセスの品質を上げる。これはコンサルが答えを出すのではなく、判断のプロセスに伴走することの価値だ。
3. 内部統制の観点から考える
ISO27001の内部監査には「独立性」という原則がある。自分の業務を自分で監査してはいけない。これはISMSの意思決定にも同じ構造が当てはまる。
担当者が「自分でリスクを洗い出し、自分でアセスメントし、自分で対応策を決める」という構造は、内部統制として弱い。判断する人・実行する人・チェックする人が同じだと機能しない——これは内部統制の基本原則だ。
社員ではない外部の人間が意思決定プロセスに関わることは、その独立性を担保する意味でも合理的だ。これはコンサルの存在意義の一つだと思っている。
4. 「役に立たないコンサル」の見分け方
現場を見ていて忍びないのは、実態のない高額コンサルに費用を搾取されている会社の存在だ。
役に立たないコンサルには共通のパターンがある。
・汎用テンプレートをそのまま渡して「作成しました」と言う
会社の実態に合わせた調整が一切ない文書は、審査で指摘を受けやすく、運用もされない。
・「全部やります」と言いながら担当者が何も学ばない
コンサル依存のISMSは、契約が終わった途端に形骸化する。担当者が自分で動ける状態になっていないコンサルは、次の更新審査のために戻ってくることを前提にしている。
・進捗の根拠を説明できない
「これをやれば大丈夫です」と言うだけで、なぜその対応が必要かを説明できないコンサルは、ISO27001の要求事項を本当に理解していない可能性がある。
5. フルコンサルより「スポット支援」が合う会社の方が多い
フルサポートのコンサル契約(最初から最後まで全部お任せ)が必要な会社は、実はそれほど多くない。
多くの会社に合っているのは、「特定の場面だけ外部の人間に関わってもらう」というスポット支援の形だ。
具体的にスポット支援が効く場面はこういうところだ。
・適用範囲の設定と妥当性確認:自分たちが決めた範囲を外部視点でレビューしてもらう。
・リスクアセスメントの壁打ち:洗い出したリスクの抜け・漏れを確認してもらう。
・内部監査のサポート:初回監査のチェックリスト作成と当日の立ち合い。
・審査前の最終確認:外部審査の直前に、指摘が出そうな箇所を事前チェックしてもらう。
こういった「ここだけ手を借りる」という使い方の方が、費用対効果が高いケースが多い。担当者が主体的に動きながら、詰まった場面だけ外部を使う——これが現実的な運用だと思っている。
6. 自分たちで進められるかの判断基準
フルコンサルが必要かどうかを判断する基準を3点挙げる。
① 週5時間以上を確保できる担当者がいるか
これが確保できないなら、コンサルに頼るより先に体制を整えることを検討する。
② ISO27001の要求事項を自分で読んで理解できるか
規格文書を読んで「何を求められているか」が分かるレベルなら、実作業は自分たちで進められる。
③ 意思決定を経営者に通せる環境があるか
経営者が関与できない環境では、外部の人間が「経営者を動かす役割」を担う必要が出てくる。これはスポット支援より継続的な関与が必要な場面だ。
→ ISO27001が必要な会社・不要な会社——判断基準を現場目線で整理する
外部を使うなら「答えを出す人」ではなく「プロセスを整える人」を選ぶ
コンサルの価値は「答えを出すこと」ではなく、「意思決定のプロセスを整え、担当者が自分で動ける状態を作ること」だと思っている。
コンサルが去った後も、担当者が自信を持ってISMSを回せる状態になっているかどうか——それがコンサルの本当の成果だ。そうなっていないなら、そのコンサルは次の契約のために依存関係を作っているだけかもしれない。
外部の人間を使うなら、「答えを持ってくる人」より「プロセスに並走してくれる人」を選んでほしい。費用の多寡より、関わり方の質を見て判断することをすすめる。
適用範囲の設定や内部監査など、「ここだけ確認してほしい」という場面でのスポット支援については、別途相談を受け付けている。費用をかける前に、まず話を聞いてほしい。
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